こんにちは、ボウサイ博士です!
地震大国・日本に住む私たちにとって、防災対策は決して他人事ではありません。中でも見落とされがちなのが「家具類の固定」です。
大地震が発生した際、ケガの原因として最も多いのが、家具類の転倒や落下によるものです。大きな本棚が倒れて下敷きになる、テレビが飛んできて頭を打つ、ガラス扉が割れて深刻なケガを負う——こうした事故は、適切な固定をしていれば防げるものです。
家具類の固定は、誰でも今日から始められるシンプルで確実な地震対策です。命を守る準備として最優先で取り組むべき内容でありながら、「手間がかかりそう」「大丈夫だろう」と後回しにされがちでもあります。
本記事では、なぜ家具類の固定が重要なのか、その理由を災害事例やリスクとともにわかりやすく解説します。

この記事は以下のような人におすすめです!
・家庭での防災対策を始めたい人
・小さな子どもや高齢者と暮らしている家庭
なぜ家具類の固定が重要なのか?
近年発生した地震でけがをした原因を調べると、約30~50%の人が、家具類の転倒・落下・移動の3つによるものでした。

転倒・落下・移動による危険性とは?
この3つの動きにより以下のような危険が生じます。
- ケガ
- 火災
- 避難障害
1つずつ説明していきます。
ケガ
転倒・落下・移動をさらに細分化すると以下のようになります。
- 本棚や冷蔵庫など背の高い家具類の転倒による負傷
- 本棚などの上に置いてあるものの落下による負傷
- 家具類の移動に伴う衝突による負傷
- 家具類のロッキング(地震の揺れにより浮き上がる現象)に伴う衝突による負傷
- たんすなどの引き出しの飛び出しによる負傷
家具類による様々な動きにより負傷する可能性が潜んでいます。
火災
ストーブの転倒や転倒・落下した家具などが原因で電気ストーブなどの電源スイッチを押されることにより、付近の燃えやすいものに着火するなどして火災が発生することがあります。
阪神大震災において神戸市長田区では大規模延焼火災が集中しており、その原因として地震直後では電気を発火源、ガスを着火物とするものが多く、地震の数時間後およびその翌日以降では電気関連によるもの(いわゆる「通電火災」)が多かったとされています。
避難障害
避難通路、出入口周辺に置いた家具類の転倒、移動による避難経路の封鎖、たんすなどの引き出しが飛び出すことにより、つまずいてケガをしたり、避難の妨げになることがあります。
階層別の家具類の転倒などの発生割合
東日本大震災の発生後行った東京都内でのアンケート調査によると、階層別の家具類の転倒・落下・移動の割合から次のことがわかりました。

引用元:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/kagutenhandbook.html
地震が起きると様々な周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。
このような地震動のことを長周期地震動といいます。
建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。
高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます。また、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。南海トラフ地震などのM8クラスの地震が起こると、都内の50階ビルでは片振幅2mに達する揺れが10分以上継続する可能性があると言われています。
長周期地震動が発生すると建物の室内(おおむね10階以上)では、以下のような危険性が考えられます。
- 高層階では、下層階に比べ揺れが大きくなる傾向がある。
- 家具類の移動により、挟まれる、衝突による負傷のほか、通路が塞がれることにより避難障害が発生する可能性がある。
- たんすなどの引き出し付きの家具は、引き出しが飛び出して転倒することがある。
- 水槽などは中の水が大きく揺れ、落下しやすくなる。
- 吊り下げ式の証明などは、大きく揺れて落下する可能性がある。
- 家具類の転倒・落下・移動による火災が発生することがある。
- ビルのエレベーターが故障することによる避難障害も発生する可能性がある。

まとめ
地震によるケガの多くは、家具や家電の転倒・落下・移動によって引き起こされ、直接的な被害だけでなく、それに伴う火災や避難障害により、本来防げたはずの被害も少なくありません。家具の固定は、専門知識がなくても実践できる、もっとも身近で確実な防災対策のひとつです。
「自分の家は大丈夫」と思い込まず、日常に潜むリスクを正しく認識し、一つ一つ備えていくことが重要です。
地震はいつ起きるか予測できませんが、「備えるかどうか」は自分で選ぶことができます。家族の安全を守るために、今この瞬間から、家具の固定という小さな一歩を踏み出してみてください。