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擁壁の水抜き穴とは?その役割と詰まりによるリスク、メンテナンス方法を徹底解説!

擁壁の水抜き穴とは?その役割と詰まりによるリスク、メンテナンス方法を徹底解説! 擁壁の防災

こんにちは!ボウサイ博士です!

家の裏手や斜面地にある擁壁ようへきを見て、「この壁に空いている丸い穴は何だろう?」と不思議に思ったことはありませんか?それは「水抜みずぬあな」と呼ばれる重要な構造であり、擁壁の安全性に大きく関わっています。

多くの人にとって、家の内装や外観には注意が向きやすいものの、擁壁やその機能については意識が向きにくいのが現実です。しかし、もしこの水抜き穴が詰まってしまうと、雨水や地下水が行き場を失い、擁壁に大きな力がかかり、ひび割れや傾き、最悪の場合は倒壊を引き起こすリスクすらあります。

本記事では、この「擁壁の水抜き穴」が果たす役割、詰まりがもたらすリスク、そして定期的な点検やメンテナンスの重要性について、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。宅地に擁壁がある方、またこれから土地を購入しようと考えている方にとって、ぜひ知っておいていただきたい内容です。

<strong>ボウサイ博士</strong>
ボウサイ博士

この記事は以下のような人にオススメです。
防災意識を高めよう考えている人
・新しく土地を購入しようと考えている人

擁壁の水抜き穴とは、擁壁の背面(壁の裏側)にたまる水を外へ排出するために設けられた「排水口」のようなものです。穴の大きさは直径7.5cmが一般的で、古い擁壁では5cmというものも見受けられます。擁壁の中腹あたりに一定間隔で設けられているのが特徴です。

水抜き穴が必要な理由

雨が降るたびに土の中に水は浸透し、この雨水や地下水が土の中に溜まってしまうと、擁壁の背面から水圧(水が押す力)がかかり、構造物に過度な負荷が加わることになります。

もし水抜き穴がなければ、擁壁は土圧(土が押す力)だけでなく水圧も受け続けることになり、ひび割れや倒壊などの重大なトラブルを引き起こす可能性が高まります。そのため、水抜き穴は擁壁を安全に保つために欠かせない機能といえるのです。

擁壁の種類と水抜き穴

擁壁にはいくつかの種類があり、代表的なものとして「練石積ねりいしづみ・コンクリ-トブロック積み擁壁」「鉄筋コンクリート擁壁」「重力式コンクリート擁壁」「空石積からいしづみ擁壁」などがあります。

空石積み擁壁以外は一般的には水抜き穴がついていますが、空石積み擁壁はそもそも石同士の隙間から擁壁背面の水が排出されるため、水抜き穴はついていません。

なお、河川護岸やU形の水路構造物などは、河川や水路の水が水抜き穴から逆流する可能性があるため、一般的には設置しません。

設置間隔と材料、構造のポイント

水抜き穴の設置間隔に特に決まりはありませんが、宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)では、壁面の面積3㎡あたり1か所以上設置が必要とされており、大きさは内径7.5cm以上の耐水性の材料を使用することとされています。水抜き穴の配置は1か所に集めるのではなく、壁面において均等に千鳥配置(擁壁の高さが低い場合は、横一列に配置)することが一般的です。また、壁面の上部より下部の方が効率よく水を排出できるので、高さの半分より下部で均等に千鳥配置が望ましい配置になります。
また、水抜き穴の内側(擁壁の裏側)には砂利などを用いた「透水層」や「透水マット」を設置し、地下水などを集水しやすい構造になっています。なお、透水層を使用する場合は、水抜き穴と透水層の間に「吸出し防止材」という土は通さず水だけ通す材料を取り付けます。

水抜き穴は、擁壁の安全を保つために欠かせない要素です。しかし、この水抜き穴が「詰まる」ことで、逆に大きなリスクを引き起こす原因にもなり得ますここでは、実際にどのようなリスクがあるのかを具体的に解説します。

水抜き穴が詰まる原因とは?

水抜き穴は屋外に設けられているため、以下のような原因で詰まりやすくなります:

  • 風雨によって流れ込んだ泥や砂
  • 周囲の植物の根の成長
  • 擁壁背面の土砂流出

一見すると小さな問題のようですが、これらが積み重なることで、水の流れが完全に遮断されてしまうケースも少なくありません。

詰まりによるリスク

  • 水が排出されず擁壁背面に溜まり続けることで水圧がかかります。これにより、擁壁全体に過剰な力がかかり、滑動かつどう(擁壁全体が前方に動く)や転倒(前に傾く)の原因となります。
  • 水圧が局所的にかかることで、擁壁にクラック(ひび割れ)が発生します。鉄筋コンクリート擁壁の場合、これを放置するとクラックからさらに水が侵入し、内部の鉄筋が腐食するという悪循環に陥る可能性もあります。
  • 排水ができない状態が続くと、周辺地盤の水位が上がり、擁壁背面の地盤がぬかるんだり雨水が浸透しにくくなります。擁壁の背面が斜面になっている場合は、土砂崩れを引き起こす危険性もあります。

詰まりを見抜くポイント

以下のような兆候が見られる場合は、水抜き穴の詰まりが疑われます:

  • 今まで穴から水が出ていたのに、急に水が出てこなくなった
  • 雨のあと、擁壁背面の地面がいつまでも湿ったまま
  • 穴の中をのぞくと、土がつまっている

こうしたサインを見逃さず、早めに対処することが、擁壁の劣化防止につながります。

水抜き穴は、擁壁の安全性を保つために非常に重要な構造なので、1回/年や豪雨の後に穴の中をのぞいてみてください。吸い出し防止材や透水マットがある場合は、格子状の材料ややわらかい布のようなものが見えます。
古い擁壁の場合は吸い出し防止材や透水マットがなく、砂利などが直接見える場合もあります。この場合、砂利の隙間を通って土が流出し、長い年月をかけて擁壁背面の地盤が空洞化し陥没する可能性もあるので早めの対処が必要です。本来は擁壁をつくる際に吸出し防止材を取り付けるですが、後から取り付けることができる商品NKフィルターもあります。

ご家庭で簡単にできるメンテナンスとしては、水抜き穴の中に土などが詰まっていた場合は、棒状のもので土を除去したり、ホースによる水流洗浄がよいでしょう。※洗い流しすぎて擁壁背面の土まで洗い流さないよう注意しましょう。

水抜き穴が「ない」擁壁は要注意!

古い擁壁や民間施工のものには、水抜き穴が設けられていないケースがあります。水抜き穴がなければ、内部にたまった水の逃げ場がなくなり、構造的に危険な可能性があります。新しく買う土地で水抜き穴のない擁壁が敷地内にある場合は、売り主に聞くなどして慎重に判断しましょう。

擁壁に水抜き穴がない場合でも、すぐさま危険というわけではありません。

  • 周辺の地盤が透水性の良い土質
    例えば擁壁の下部の地盤が粘土の場合、粘土は水が浸透しないので水位が高くなりますが、砂やれきは粒径が大きく水を通しやすいため、どんどん地中に水が浸透していきます。しかし、未来永劫水が浸透するという保障はないので、やはり水抜き穴がある方が安心です。
  • 空石積からいしづみ擁壁
    そもそも水抜き穴がなく、石同士の隙間から地下水などが排出されます。
  • 透水管とうすいかんなどが設置されている
    擁壁の背面に透水管といわれる小さい穴が開いた管を配置し、それで地下水などを集水して別の場所から排出します。透水管は外からでは最終の排出口しか見えず、しかもその排出口も透水管のものかどうかは判別できないため、透水管が設置されているかは図面でしか確認することができません。
  • 水圧を考慮して設計された擁壁
    水圧を考慮して擁壁を設計することは可能ですが、設計者に聞かないと考慮されているかどうかはわかりません。また、擁壁自体が大きくなるので経済的な設計とはいえず、宅地擁壁では見かけません。水路構造物など特殊なケースで考慮されます。

造成地の購入・新築時には擁壁設計を確認

宅地を購入する際や、新築で造成を伴う場合は、設計段階で水抜き穴の有無と配置が適切かどうかをチェックすることが重要です。

  • 擁壁に3㎡に1か所以上の水抜き穴が設けられているか
  • 擁壁背面に砕石透水層や透水マットが使われているか
  • 溝や桝などの雨水排水施設が土地全体で整備されているか

不明な場合は、施工業者や設計者に聞いてみましょう。

擁壁は「自分の責任」で管理するもの

擁壁が宅地内にある場合、その維持管理の責任は原則として所有者にあります。例えそれが前の所有者の時代に作られたものでも、現在の所有者が安全管理を行う必要があります。

  • 定期的な点検
  • 擁壁に異変があれば、早めに行政や専門業者に相談

法律などによる規制のチェックも忘れずに

宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)の規制区域では、一定規模以上の造成をする場合に事前に行政の許可が必要です。
まずは購入予定の土地が規制区域に入っているか、許可が必要な造成でないか、過去の許可の履歴などを行政の担当窓口で確認しましょう。場合によっては、行政からすでに改善するよう勧告を受けている土地もあるのでチェックは必須です。

擁壁は、宅地や建物の安全を守るために欠かせない構造物です。そして、その擁壁の健全性を支える陰の立役者こそが「水抜き穴」なのです。普段はあまり目立たない存在ですが、雨水や地下水を効率よく逃がし、背面からの水圧によるダメージを防ぐという、非常に重要な役割を果たしています。

本記事では、水抜き穴の基本的な役割から、詰まりによって起こるリスク、そして点検・メンテナンスの方法、さらには宅地所有者として注意すべきポイントまでを詳しく解説しました。

特に以下の点は、ぜひ意識しておきたい重要事項です。

  • 水抜き穴がなければ、擁壁の安全性は大きく損なわれる可能性がある
  • 定期的な点検によって、安全性を維持できる
  • 最終的な管理責任は所有者にあるため、見て見ぬふりはリスクにつながる

擁壁の水抜き穴は、トラブルが起きてから慌てて対処するのではなく、日頃のちょっとした観察や手入れが最大の予防策になります。「最近あまり気にしていなかったな…」と思った方は、まずは擁壁の状態をチェックすることから始めてみてください。

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